多点LP法による転がり疲労寿命値の実験整合性(鋼球肩乗り上げ)
事例c3では、線接触問題におけるエッジロード問題を取り扱いましたが、本事例では、点接触における鋼球肩乗り上げ問題を取り扱います。
鋼球肩乗り上げの寿命試験では、内輪外径を削り込むことで肩高さを変化させた各種サンプルを製作し、これらに対して軸受寿命試験を実施します。得られた結果と、NOCPACの多点LP法にて計算した寿命値を比較します。
なお、肩乗り上げ問題では、通常、荷重が大きいため、接触領域が平面上にあると見なせない場合がありますが、本事例では、内輪を削り込んでいるため、接触領域が広がることはなく、同一平面上にあると見なせます。
表1、図1に供試サンプルの内輪形状を示します。
表1 サンプル内容(6206内輪)


図1 6206内輪形状
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<解析結果>
前述のように、転がり疲労寿命試験は軸受で実施しており、複数の接触点が存在します。一方、NOCPACは1回の計算で一つの接触問題しか取り扱うことができません。そこで、以下のように考えます。
転がり疲労寿命は最大の転動体の負荷による影響が大きく、また、内輪側の寿命が支配的であるため、ここでは、ROBPACSを用いて6206の寿命試験中の最大転動体荷重を算出し、そのときの接触状態をNOCPACにより解析し、寿命低下比率の把握を行うことにします。
(1)接触面圧
接触面圧計算結果を、図2に示します。
図2 接触面圧計算結果
図の横軸は、接触中心を3mm位置として、右が溝肩方向、左が溝底方向です。
図より、V2では肩乗り上げが生じて、接触面圧が約4.1mm位置で上昇していることがわかります。また、V3では、左側の溝にも乗り上げていることがわかります。
(2)表面下応力(τ0)
図3は転がり疲労寿命に影響する、剪断応力振幅τ0の最大値の分布を示したものです。

図3 表面下応力τ0の最大値計算結果
図3から、τ0のピーク値はV1,V2,V3と順に大きくなっていることがわかります。なお、図2ではV3の接触面圧の左側にもピークがありましたが、図3では左側にピークは見られませんので、左側の面圧ピークが寿命へ及ぼす影響は小さいと言えます。
(3)転がり疲労寿命計算結果
図3の結果を用いて、多点LP法による転がり疲労寿命計算を行った結果を実験結果とともに図4に示します。

図4 多点LP法による転がり疲労寿命計算結果と実験結果
図4より、多点LP法による転がり疲労寿命値は実験結果の傾向をよく捉えていることがわかります。ただ、前述のように多点LP法は最大転動体荷重での寿命値であり、実験は軸受としての寿命値であるため、寿命値そのものを使用することはできません。しかしながら、肩乗り上げによる寿命低下比率を検討するような場合には、有効と考えられます。
今回、計算速度を重視して、面圧メッシュで最大81×41、応力メッシュで50×31×8程度の、やや粗いものを使用しましたが、かなり良い精度で寿命予測ができました。NOCPAC計算時間は表2のように、最大で60秒程度でした。
表2 NOCPAC計算時間(sec)
| V1 | V2 | V3 | |
| 計算時間 | 63 | 16 | 22 |
以上のように、多点LP法を使用することにより、鋼球肩乗り上げ時の寿命低下率を求めることができます。
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