すべり率と摩擦係数の関係(Liu and Yangとの比較)
本例では、事例t4の線接触解析事例における摩擦係数について、すべり率を変化させて、文献(*)と比較します。事例t4同様、TEHLACでは、Eyring流体の特性剪断応力値を大きくして、疑似的に文献のNewton流体計算を行います。(本解析では形状定義にNOCPACを使用します)
(*) 有限幅TEHL線接触解析文献として、下記文献を参照します。
Liu, X. and Yang, P., "Analysis of the thermal elastohydrodynamic
lubrication of a finite line contact", Tribology International, 35,
(2002), pp.137-144.
接触二物体:カットクラウニング円筒ころ(下記のφ25.4x14.7ころ)と平面

(注1)半径Ryのクラウニングは直線部と滑らかにつながる
(注2)Rx=12.7, Ry=4, l=12.7, L=14.7
図1 計算対象のカットクラウニングころ(物体1)
物体速度 :すべり率 ξ =0, 0.02, 0.05, 0.2, 0.4, 0.7, 1.0, 1.5
(摩擦係数計算には、これ以外にも計算点を追加)
各すべり率に対する、物体1、物体2の速度[m/s]を下表に示します。
表1 すべり率と物体1,物体2の速度

(注)文献では平面(物体2)の速度の方が、ころ(物体1)の速度より速い設定になっていますが、事例t4同様、TEHLACでは上部物体は下部物体より速くなければならないため、ころが下部物体、平面が上部物体になります。
その他の入力諸元は事例t4と同じであり、記載を省略します。
TEHLメッシュ(x,y,z):79x89x9
(事例t4と比べて、z方向分割を7-->9 に増加 但し、ξ=1.5は事例t4結果を使用)
<解析結果>
(1)すべり率と温度
図2(a)に、文献の図5(c)を掲載します。この図は、すべり率ξを変化させて、ころエッジ部ところ軸方向中央位置での最大の温度をプロットしたものです。図2(b)は、これに対応するTEHLAC計算結果です。

(a)文献の図5(c) (b)TEHLAC計算結果
図2 ころエッジ部と軸方向中央部の温度(文献の図5(c))
両者を比較すると、中央位置での温度はほぼ一致していますが、エッジ部の温度が異なっています。また文献のエッジ部温度は若干蛇行しています。ちなみに、エッジ部温度は下図のように、ピーク状になっています。これは、メッシュ作成方法によって(エッジ部の節点位置によって)、発生する面圧が異なるため、これに伴って、温度も異なっていると考えられます。これが、図(a)(b)で、エッジ部温度が異なる原因と考えられます。一方、中央部はY方向節点位置節点位置の影響を受けないため、面圧の違いが少なく、両者の値が一致しやすいと考えられます。

図3 ころ軸方向温分布度(ξ=1.5, x=0位置)(TEHLAC解析結果)
(2)すべり率と温度分布
TEHLAC解析結果における、ころ中央部での温度分布をすべり率の変化とともに下図に示します。

図4 すべり率と温度分布(y=0位置)(TEHLAC)
図4で、ξ=0 の場合の温度分布は図5のようになっており、接触部より前方領域での温度上昇の方が大きくなっていますが、図4では目盛の影響で、この状況がわからなくなっています。温度上昇の大きい
ξ=1.5 などと比較すると、すべりが小さい場合の前方領域の温度上昇は無視しても構わないくらいわずかなものであることがわかります。

図5 ξ=0の温度分布(TEHLAC)
(2)摩擦係数
図6(a)は、文献のFig.5(e)を掲載したもので、すべり率 ξ と物体a(平面)の摩擦係数の関係を表しています。縦軸単位は、(x10-2)です。
一方、図6(b)は、TEHLACによる物体1(ころ)の摩擦係数計算結果です。

(a)文献のFig.5(e) (b)TEHLAC計算結果
図6 接触面圧計算結果(文献とTEHLAC)
図6(a)(b)を比較すると、文献とTEHLACの解析結果は概ね良く一致していると言えます。しかし、ピーク値についてはTEHLACの摩擦係数がやや小さくなっています。この原因は、文献とTEHLACのメッシュの差によるエッジ部面圧の違いによるものと考えます(文献メッシュ:257x257x11;TEHLACメッシュ:79x89x9)。
次に、摩擦係数が図6のようなピーク特性を持つ原因について調査しました。 --> 解析事例t5の続きへ
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