フルクラウニング形状での最適クラウニング計算(寿命最大化)
本事例は、事例c3「多点LP法による転がり疲労寿命値の実験整合性」で取り上げた、φ12×12フルクラウニング円筒ころとφ20×20円筒の接触問題で、転がり疲労寿命値を最大にするクラウニング変形を探索します。
さらに、類似事例ROBPACS解析事例s23の最適値との違いについて考察します。
目的関数:転がり疲労寿命値最大化
変数 :フルクラウニングころのクラウニング半径
最適クラウニング探索手法: 修正勾配法(幣房オリジナル)

図1 ころ形状
表1 φ12×12円筒ころの転がり疲労耐久試験結果(*)

(*)Sugiura, I., Itoh, S., Tsushima, N., and Muro, H., Investigation of Optimum
Crowning in Line Contact Cylinder to Cylinder Type Rolling Contact Fatigue
Test Rig, Rolling Contact Fatigue Testing of Bearing Steels, STP771, Ed.,
J. J. C. Hoo, p.136-149, ASTM, 1982
または、Itoh, S., and Sugiura, I., Investigation of Optimum Crowning in Line Contact Cylinder to Cylinder Type Rolling Contact Fatigue Test Rig, NTN Technical Review, No.48 (1982), pp.18-26.

図2 多点LP法による転がり疲労寿命計算結果と実験結果(事例c3より)
【面圧メッシュ】 基本分割:48×60 再分割:チャンファ部位置両側0.1mmを7分割(77x61,不均一分割)
【応力メッシュ】 x方向:0.5mm均等分割+応力集中部(x=0.5と11.5)両側0.1mmを10分割(等分割)
y方向:0.01mm均等分割+応力集中部(y=0.22)両側0.03mmを6分割(等分割)
z方向:0.002mm均等分割
【修正勾配法】 初期値 :700mm
刻み幅 :50mm
計算回数:10回
<解析結果>
修正勾配法から得られた最適クラウニングRを表2に示します。
表2 最適値探索結果 
上記文献では、クラウニングRの最適値は、V2(R480)とV3(R890)の間にあるとコメントされており、表2NOCPAC解析結果の725mmはこの範囲にあるため、得られた結果は妥当であると考えられます。
ROBPACS最適値との比較
フルクラウニング時の最適クラウニング探索は、ROBPACSにて事例c23でも実施しており、この時の最適クラウニングRは以下のようでした。
ROBPACS最適値 786.3mm
NOCPAC最適値 725mm
ROBPACSとNOCPACで差が生じる原因として、2点考えられます。
一つは、ROBPACSで使用しているEPC法のころエッジ部での計算精度不足が考えられます。即ち、EPC法ではエッジロード値が、若干小さく計算されることがわかっていますが、エッジロードが小さいと、寿命値の低下がそれほどでもないため、最適値はクラウニングRが大きい方へずれるます。このため、ROBPACSでは最適クラウニングRが大きく計算される、と推測されます。これが原因であれば、NOCPACの方が信頼性があるということになります。
もう一つの原因は、ROBPACSでは面圧値を用いて寿命計算しているのに対して、NOCPACは表面下応力値を用いて寿命計算していることです。面圧値ベースの寿命計算方法の妥当性と、多点LP法の寿命計算方法の妥当性とで、どちらに信頼性があるかという問題であり、現時点では判断できません。この問題は、事例c8でも生じています。
(補足)事例c3ではころ寿命を計算するため、寿命計算に使用する軌道輪長さをころ直径のφ12で計算しましたが、最適クラウニング計算モジュールでは、入力値により、自動的に内輪または外輪どちらかの寿命を計算します。このため、ころ寿命は計算できません。このため、表2の寿命値を図2の寿命値と比較することはことはできません。今回は内輪ところの接触であるため、軌道輪長さは、内輪直径φ20で計算されています。ちなみに、V2とV3の内輪寿命を計算すると0.95×106と1.13×106でした。
(参考)
最適クラウニング時(R=725mm)の接触面圧を図3、剪断応力分布を図4に示します。

図3 最適クラウニング時(R=725mm)の接触面圧(y=0断面)

図4 最適クラウニング時(R=725mm)のτmax
(注)τmax: y-z平面内での表面下剪断応力τyzの最大値
最適クラウニング時の接触面圧は、若干エッジロードが発生するような分布が良いということがわかっていますが、図3は、これを裏付ける結果となりました。図3ではピーク値で30000MPaあり、エッジロードが大きいように見えますが、エッジ部でメッシュを細かくしているためです。即ち、ころエッジ部(x=0.5,11.5)は特異点であり、メッシュ分割を細かくすると際限なく面圧が上昇していきます。このため、図3では大きなエッジロードが発生しているように見えます。エッジロードの程度は、寿命因子である表面下応力τyzへ及ぼす影響で判断するべきと考えます。
yz平面でのτyzの最大値である「τmax」をプロットした図4では、エッジ部の値が、それほど大きくないことから、図3のエッジロードはそれほど大きくないと言えます。
(補足)図4では、ころ端部(X=0.5,11.5)での細メッシュが応力ピーク値を捉えていないように見えますが、点が重なっているためであり、十分にピークを捉えています。
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