対数クラウニングでの最適クラウニング計算(面圧均一化の妥当性)
対数クラウニングは、面圧を均一化することができるので、長寿命を与えてくれると考えられています。しかしながら、軸受寿命は、表面下剪断応力τyzの最大値(以下「τmax」または「TAUMAX」と呼びます)の大きさとその発生深さz0によって決定され、面圧によって決定されるわけではありません。そこで、本事例では、面圧を均一化することと、τmaxを小さくすることは同値なのか、調査してみます。
調査の方法として、面圧が均一になるような対数クラウニング形状の探索(下記の目的関数@)と、表面下剪断応力τyzの最大値を最小にするような対数クラウニング形状の探索(下記の目的関数A)を実施し、両者を比較します。併せて、ROBPACS事例s24の最適値探索結果(k1=1.0,k2=1.0,zm=0.02)をNOCPACでも計算して、比較対象に加えます。
対数クラウニングの形状については、このリンク参照-->対数クラウニング形状
<計算内容>
目的関数:@接触面圧最大値の最小化 --> 均一面圧を得る
A表面下剪断応力τyzの最大値(TAUMAX)の最小化
ころ :φ12×12 (チャンファ長さ 0.5mm)対数クラウニング
軌道面 :クラウニングなし
変数 :k1,zm(k2=1.0固定:下記「係数k2について」参照)
最適クラウニング探索手法: 修正勾配法
係数k2について
類似事例ROBPACS解析事例s24の最適値探索結果では、k1=1.0,k2=1.0,zm=0.02が得られています。この結果ではk2=1.0
即ち、直線部がない方が良いという結論です。ROBPACS事例s24では、指定領域探索法による探索であるため、最適値が完全にピークを捉えているわけではありませんが、一般的に対数クラウニングに直線部があると、部分的には対数曲線からはずれるため、均一な面圧が得られないと考えられます。このため、本事例では、k2=1.0を前提(直線部は設けない)とします。
面圧メッシュ、応力メッシュは下記の通りです。
【面圧メッシュ】 基本分割:48×60 再分割:チャンファ部位置両側0.1mmを7分割(等比級数分割)
【応力メッシュ】 x方向:0.5mm均等分割+応力集中部(x=0.6と11.4)両側0.15mmを15分割(等分割)
y方向:0.01mm均等分割+応力集中部(y=0.22)両側0.03mmを6分割(等分割)
z方向:0.002mm均等分割
【最適値探索法】 指定領域探索法の後、修正勾配法(詳細下記)
・最大面圧最小化 初期値 :k1=1.4, zm=0.018
刻み幅 :k1=0.05, zm=0.005
計算回数:10回
・TAUMAX最小化 初期値 :k1=1.1, zm=0.013
刻み幅 :k1=0.05, zm=0.001
計算回数:5回
<解析結果>
探索の結果得られた最適値を、表1に、そのときの面圧を図2に、表面下剪断応力τyzの最大値(TAUMAX)を図3に示します。なお、「ROBPACS事例s24」と記載があるものは、上記のように、事例s24で得られた最適値(K1=1,
K2=1, ZM=0.02)を用いてNOCPACで再計算したものです。
表1 最適値探索結果

最大面圧値の比較
表1で、最大面圧値を比較すると、目的関数「最大面圧最小化」の探索結果では、一番低い面圧値が得られており、探索が妥当であることがわかります。次いで、「ROBPACS事例s24」の結果が低い値となっていますが、図2(c)から、若干エッジロードが発生していることがわかります。事例s24では、ROBPACSによる計算であるため、EPC法を用いて面圧計算していますが、EPC法ではエッジ部面圧が若干小さく計算されるため、得られた最適値パラメータでは、NOCPACで計算すると、エッジ部が若干大きく計算されると考えられます。
一方、「TAUMAX最小化」の値は非常に大きな値になっており、図2(b)からも大きなエッジロードが発生していることがわかります。
最大TAUMAX値の比較
次に、表1の「最大TAUMAX値」で比較すると、最大TAUMAX値が一番小さかったのは、当然のことながら、目的関数を「TAUMAX最小化」として探索したケースでした。図3では赤色で表示されていますが、τmaxの値がほぼフラットになっていることがわかります。
一方、「最大面圧最小化」は、表1で2番目に小さい値になっていますが、図3での分布(青色)はエッジ部でのτmaxの上昇はなく、中央部が膨らんだ分布となっていました。この理由は、図4から明らかにできます。
図4はY方向面圧分布をX=0.6(エッジ部)とX=6.0(長手方向中央部)の位置で見たものです。(a)ではX=0.6, X=6.0とも、Y=0の位置でほぼ同じ値を示していますが、接触幅はX=0.6は小さいことがわかります。このため、τyzの値はエッジ部で小さくなり、図3のように中央部が膨らんだ形になると考えられます。一方(b)では、X=0.6のピーク値はX=6.0より若干大きくなっていますが、接触幅はX=6.0とほぼ同じか、やや少ない値になっており、τyzは、エッジ部と中央部でほぼ同じになると考えられます。
また、「最大面圧最小化」の場合、図2(a’)にみられるように、エッジ部の数点は面圧値が小さく、負荷を受けていないことがわかります。これは、全点で負荷を受ける場合と比べると、中央部の点が受ける負荷が大きくなるため、あまり好ましい状況ではありません。
次に、「ROBPACS事例s24」については、「最大面圧値の比較」で述べたように、ROBPACSのEPC法による面圧分布と比べてNOCPACでは、エッジ部面圧が上昇するため、図2(c)のような面圧分布となり、これに伴い、τmax(図3)がエッジ部で緩く盛り上がると考えられます。

(a)最大面圧最小化 (a’)最大面圧最小化(エッジ部拡大図)

(b)TAUMAX最小化 (c)ROBPACS事例s24
図2 最適値における接触面圧
図3 最適値における表面下剪断応力τyz最大値(τmax)

(a)最大面圧最小化 (b)TAUMAX最小化
図4 y方向接触面圧分布(「最大面圧最小化」と「TAUMAX最小化」)
以上のように、対数クラウニングで、面圧を均一化することと、τyzの最大値(τmax)を小さくすることは同じではなく、寿命最大化のためには、図2(b)のように、エッジロードが若干発生した方が、均一なτmax分布が得られると考えられます。
【補足】
<面圧分布の均一化手法について>
今回、接触面圧分布の均一化の目的関数として、「最大面圧最小化」を選択しましたが、このほかの目的関数として、下記のものがあります。
・面圧分散値最小化:面圧平均値(面圧0は除外)からの差の2乗(分散)
・面圧差最小化 :面圧平均値(面圧0は除外)からの差の絶対値(面圧差)
面圧分布の均一化を図るために、どの目的関数が良いのか、という課題もあり、以下で検討します。
上記2つの目的関数を用いて、探索した結果は下記のようでした。(但し、やや粗い検索です)
最適値探索結果
・面圧分散値最小化:k1=1, zm=0.018
・面圧差最小化 :k1=1, zm=0.018
両者同じ結果であるため、「分散値最小化」についてのみ、最適値時の接触面圧と表面下剪断応力τyz最大値(τmax)を図5,6に示します。

図5 面圧分散値最小化時の接触面圧 図6 面圧分散値最小化時のτyz最大値
図5では、中央部はフラットですが、エッジ部で面圧が増加しています。一方、図2(a)の「最大面圧最小化」では、エッジ部もフラットになっていますが、エッジ部に6〜7点プロットされた点があります。これに関しては、「分散値最小化」では、エッジ部に2点あるだけで、その他のプロットはありません。「分散値最小化」(面圧平均値からの差の2乗を最小化)では、このエッジ部の点を減らすために、面圧がエッジ部で一度盛り上がって、その後ストンと落ちていると考えられます。これは「面圧差最小化」の場合も同じです。
図6では、図5のエッジ部面圧が上昇するためエッジ部でτmaxも上昇していると考えられます。
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