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解析事例−s22EXAMPLE-s22

FR車用マニュアルトランスミッションのギア噛合い量計算

下図のような5速のFR車ギアボックス構造(ギアは円盤で表現)を仮定し、ギア噛合い量の計算を行います。(下図は3D-CADで作成したものであり、ROBPACSインターフェイスで表示されるものではありません)

     
         図1 FR車マニュアルトランスミッション(平面図;リバース軸を除外)
     
               図2 FR車マニュアルトランスミッション(鳥瞰図)

事例s21と比較すると、ファイナルギアが出力軸上にあり、かつポケットベアリングを介して、入力軸と連結された形になっています。このため、軸が長くなっています。このため、カウンター軸を支持する軸受のスパンが長くなっており、軸たわみが増加することが想像されます。

入力トルク・回転数と各速度の使用頻度を表1に、ギア諸元を表2に示します。事例s21と比較すると、表1は同じであり、表2ではNo.7のFinalギアが追加されています。

表1 入力トルク・回転数と使用頻度
 変速位置  入力トルク
(Nm)
入力回転数
(rpm) 
使用頻度
(%) 
噛合ギア数
(入力〜出力) 
 1st  200  3000  1  2
 2nd  200  3000  4  2
 3rd  200  3000  15  2
 4th  200  3000  60  2
 5th  200  3000  20  2
 rev  200  3000  0  3

表2 「入力軸+出力軸」(軸アッシィ番号1)のギア諸元(他の軸のギア諸元は割愛)
 ギア番号  名称  位置
(mm)
 タイプ  歯数 PCD
(mm) 
 圧力角
(deg)
ねじれ角
(deg) 
 No.1  1st  20  ヘリカル 10  30  20  30
 No.2  2nd  40  ヘリカル 20  40  20  30
 No.3  3rd  60  ヘリカル 30  50  20  30
 No.4  4th  80  ヘリカル 40  60  20  30
 No.5  5th  100  ヘリカル 50  70  20  30
 No.6  rev  120  平歯車 16  32  20  −
 No.7  Final  255  ヘリカル 40  80  20  30

動力伝達パスを表3に示します。表中のn-mのnは軸アッシィの番号、mは軸アッシィ中のギアの番号を示します。噛合番号の数は表1の噛合ギア数と対応しています。事例s21と比較すると、第1軸の噛合いは変わりませんが、最終噛合いギアは、事例s21では第4軸であったものが、本例では第1軸になることがわかります。

表3 動力伝達パス
   噛合No.1  噛合No.2  噛合No.3
   drive driven  drive   driven drive   driven
 1st  1-1 2-1 2-7 1-7  −  −
 2nd  1-2 2-2 2-7 1-7  −  −
 3rd  1-3 2-3 2-7 1-7   −  −
 4th  1-4 2-4  2-7 1-7  −  −
 5th  1-5 2-5  2-7 1-7  −  −
 rev  1-6 3-1  3-1 2-6 2-7  1-7


<解析結果>

1速時の第1軸と第2軸のたわみ量を図3に示します。
第1軸(No.1)は入力軸+出力軸、第2軸(No.2)はカウンター軸であり、それぞれ、軸中心位置でのラジアル方向(DELX,DELY)とアキシャル方向(DELA)の変位量をプロットしています(軸傾斜量、ねじれ量は割愛)。DELXは第1軸から第2軸に向かう方向、DELYはそれに直角方向です。1速時のギアは、入力軸は20mm位置、出力軸は255mm位置(ファイナルギア)にあり、カウンター軸も20mmと255mm(ファイナルギア)位置でギアが噛合います。

図では、第2軸(カウンター軸;図のNo.2)のラジアル方向変位量(DELX,DELY)が大きくなっています。この原因は軸受スパンが長いことが考えられます。
また、第2軸の変位を事例s21と比べると、DELXが小さく、DELYの向きが逆になっています。DELXについて結論から述べると、DELXが小さくなる原因は第2軸のNo.2ギアで発生するモーメントMyにあると考えられます。なお、第2軸のNo.1ギアで発生する荷重・モーメントは事例s21(FFミッション)と本事例(FRミッション)で全く差はありません。
モーメントMyはギア歯面のアキシャル荷重によって発生するため、アキシャル荷重値にギアPCRをかけて得られますが、第2軸のNo.2ギアで発生するモーメントMyにはFFとFRで大きな差があります。この原因は、FRミッションではファイナルギアの噛合い位置と、FFミッションのファイナルギアの噛合い位置が、ラジアル方向で逆(実際にはFFでは若干の角度が付いており、真逆からは少しずれます)になっていることです。即ち、歯面で発生するアキシャル荷重が同じ方向を向いていても、ギアで発生するモーメントMyは噛合い位置により逆になるということです。このため、FRでは、No.1ギアで発生するモーメントとNo.2ギアで発生するモーメントが打ち消しあってDELXを小さくしています。
一方、DELYは、歯面の接線荷重により大きさと向きが決まりますが、上述のように、FFとFRで噛合い位置が逆になるため、発生する接線荷重の向きが反対になり、このため、FFとFRでDELYの向きが逆になると考えられます。


                 図3 1速時の入力軸出力軸の変位量

図4はギア噛合い点のギア歯面位置での移動量、並びに両軸間の相対移動量です。


                図4 ギア歯面位置での相対変位量

図5は各軸受の各速度での寿命と使用頻度を考慮したトータル寿命です。BRGn-mはn軸のm番目の軸受を示しています。入力軸の軸受はBRG1-1,BRG1-2、出力軸の軸受はBRG1-3,BRG1-4です。BRG1-2はポケットベアリングであり、内輪が3000rpm,外輪が500rpmで同じ方向に回転しています。カウンター軸の軸受はBRG2-1,BRG2-2です。リバース軸(軸No.3)は使用頻度が0となるため、グラフから除外しています。


                   図5 軸受寿命

図5では、軸受2-2の寿命が短いことがわかります。軸受2-2はカウンター軸のファイナルギアに近く、ファイナルギアは大きなトルクを伝達するため、発生する荷重が大きく、このため、軸受2-2は大きな負荷を受け、寿命が短くなると考えられます。なお、出力軸の軸受1-3,軸受1-4も同じ反力を受けますが、第1軸は軸受が4個あり、スパンも短いため、寿命低下が少ないと考えられます。

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