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解析事例−t6EXAMPLE-t6

温度境界条件の比較(Carslaw & Jaegerの式と固体内部温度計算)

本事例では、解析事例t1のモデルに対して、温度境界条件を変更し、境界条件の影響を比較します。

   温度境界条件1:Carslaw & Jaegerの式(解析事例t1と同じ )
   温度境界条件2:固体内部の温度分布計算(厚み方向端部で外部温度と同じ)

解析モデルは以下の通りです(事例t1と同じです)。
  接触二物体:半径20mmの球と平面
  物体1速度:0.849 m/s(推定)
  物体2速度:0.283 m/s(推定)
  負荷荷重 :271.68 N(推定)

  大気圧粘度(η0)  :0.08 [Pa・s]
  圧力-粘度係数(α) :2.2・10-8 [1/Pa]
  温度-粘度係数(γ) :0.042 [1/k]
  潤滑剤大気圧密度(ρ0):870 [kg/m3]
  固体密度(ρs)     :7850 [kg/m3]
  熱膨張係数(β)  :0.00065 [1/k]
  潤滑剤比熱(cf)  :2000 [J/kg・k]
  固体比熱(cs)   :470 [J/kg・k]
  潤滑剤熱伝導率(kf):0.14 [w/m・k]
  固体熱伝導率(ks) :46 [w/m・k]
  圧力-密度係数(C1):0.6 [1/GPa] (Dowson-Higginson密度式の係数)
  温度-密度係数(C2):1.7 [1/GPa] (Dowson-Higginson密度式の係数)
  入口部温度(t0)  :303 [k]

  Eyring粘性の特性剪断応力(τ0): 15 [MPa]

  無次元固体厚み(Da):1.5(=da/b);節点数=11(等間隔)
  無次元固体厚み(Db):2.0(=db/b);節点数=11(等間隔)
  (b:接触楕円短軸半径)

  メッシュ:129×49×11


<解析結果>

境界条件の違いによる油膜中央部温度(油膜内部温度Tの油膜厚さ方向中央位置:メッシュ番号k=6)解析結果を図1に示します。境界条件として、固体内部の温度分布計算を実施した場合は、温度境界条件がCarslaw & Jaegerの式を用いた場合(事例t1と同じ)と比べて、温度が若干高くなりました。


    
          図1 温度境界条件の違いによる油膜中央部温度解析結果(τ0=15)


一方、Liu, Jiang, Yamg, and kanetaによる油膜中央部温度解析結果(文献中のFig.3(c))を図2に示します。
τ0=15MPaでの結果をみると、ピーク値は1.25より若干小さい値となっており、図1のCarslaw & Jaegerの式に近い結果となっています。しかし、Liuらの計算は、固体内部の温度分布計算を実施した結果であるので、図1の「固体内部温度分布」の結果と一致しなければいけません。この差の原因について、以下で検討します。
   

   図2 油膜中央部温度解析結果(Liu, Jiang, Yamg, and kaneta)(メッシュ:257×97×11)



固体内部温度分布実施結果が、LiuらとTEHLACで一致しない理由として、「固体の厚みが十分であるか」という点が考えられます。
この傍証データとして、図3に、メッシュを33×33×11と計算規模を縮小して、固体の厚みDa, Dbを変化させて、Y=0位置での温度分布を調査した結果を示します。

      
        図3 固体の厚みが油膜中央部温度に及ぼす影響(メッシュ:33×33×11)


固体の厚みDa, Dbが十分でないと、温度Tが十分上昇しないことがわかります。この理由は、固体厚み部端部(Z=Db)で、固体内部温度が外気温t0(303[K])と同じになるため、固体表面の温度が外気温の影響を受けて放熱しすぎていると考えられます。このときの、固体BのX=Y=0位置での、固体内部厚み方向の温度分布を図4に示します。Da=Db=0.9でも、まだ温度勾配が0になっておらず、Da=1.5, Db=2.0で、温度勾配がほぼ0になっていることがわかります。
また、Da=Db=3.0の不等間隔メッシュ(図の赤丸)の計算も実施しましたが、Da=1.5,Db=2.0とほぼ同じ結果が得られ、固体厚さの妥当性が検証されています。

    
                図4 固体BのX=Y=0位置での固体厚み方向温度分布
               (油膜メッシュ:33×33×11, 固体メッシュ:33×33×11)

なお、上部固体Aの厚みがDa=1.5, 下部固体Bの厚みがDb=2.0と、下部固体の厚みを大きくしなければならない理由は、下部物体の速度が遅いため、流体による熱除去が少なく、このため固体表面の温度が高くなり(図5)、固体厚み端部(Z=Db)での温度勾配がほぼ0となるまでの距離がより長く必要になるため、と考えられます。

       
                  図5 固体表面の温度分布(TA:上部、TB:下部)

以上の検討から、Liuらの計算において、固体の厚みが十分であったか、という疑問が生じますが、論文には、固体の厚み方向の節点数は6であるとの記述以外、厚みのサイズについての記載は見当たりません。ただ、計算理論として引用しているGuoらの論文(*)では、「固体の厚みは油膜厚さより大きくしなければならないが、節点数を大きくすることはCPUタイムやメモリー消費上、実用的ではない」と記載されており、さらに、「より多くのノードを使用して数値テストをしたところ、いくつかの差が示されたが、結果の違いは小さく、結論に本質的な影響を与えるものではなかった。このことは、この論文の主目的を定性的に示すことに問題はない。」という記述があり、厚み不足を窺わせる内容にもとれますが、あくまで推測であり、真偽の程はわかりません。
Guoらの論文の記述とLiuらの論文の結果との関連性は不明ですが、両者とも、上下物体が反対方向に回転する時にディンプルが発生するという現象を解明するためのものであり、当該現象解明を主目的としており、温度分布計算の厳密性を目的とはしていない、ということだと思われます。

(*)Guo, F., Yang, P., and Qu, S.," On the Theory of Thermal Elastohydrodynamic Lubrication at High Slide-Roll Rations - Circular Glass-Steel Contact Solution at Opposite Sliding", Transacrtion of the ASME, Journal of Tribology, Vol.123, (2001), pp.816-821.


以上より、TEHLACの正当性が完全に証明されたとは言えませんが、間違っているということでもなく、上記検討内容からは、むしろ妥当であると考えられます。
ちなみに、TEHLACは、固体内部の温度分布計算方法を工夫しているため、固体内部の節点数を多くしても、Guoらの論文で言及されているようなCPUタイムやメモリー消費への問題はほとんどありません。

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